整理回収機構の企業再生業務 The Resolution and Collection Corporation
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再生計画における「資産・負債の評価基準」


I 基本的な前提条件

1.  支援対象企業について作成された「実態貸借対照表」は、監査法人・公認会計士・税理士等専門家によって行われたデューデリジェンスに基づく公正かつ適正な資産評定に因らなければならない。

2.  不動産については、不動産鑑定士による不動産鑑定評価または簡易鑑定評価を行い、時価評価された金額をもって実態貸借対照表が作成されていること。


※ 全ての不動産について時価評価すること。


※ 鑑定評価・簡易鑑定評価は複数の鑑定人に依頼することが望ましい。

II 専門家によるデューデリジェンス結果についてRCCとして検証する基準

科目 評価基準
○売上債権
  ・受取手形
  ・売掛金
  ・完成工事未収入金
  等
(1)各債権金額から取立不能見込額または貸倒見積額を控除した額を時価とする。
(2)相手先の経営、財政状態等信用力を評価して算定する。(信用力の高い先に対する債権は減算不要)
(3)過去の瑕疵に基づく減額率や回収実績等を参考に一定割合を減額控除することも可能。
(4)子会社等の関係会社宛の売上債権は、清算予定会社宛の債権で清算配当等により回収が可能と認められる額は、担保処分見込額及び保証による回収見込額と同様に取扱う。
○棚卸資産 (1)〔商品・製品〕 正味実現可能価額から販売努力に対する合理的見積利益を控除した価額を時価とする。
(2)〔半製品・仕掛品〕 製造販売価額から完成までに要する費用、販売費用、完成販売努力に対する合理的見積利益を控除した価額を時価とする。
(3)〔原材料等〕 販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき原材料については、再調達価額を時価とする。
(4)品質低下、陳腐化している棚卸資産、及び大幅な値引きを余儀なくされるものは、予定処分価額にて調整し時価とする。
○販売用不動産 (1)開発を行わない不動産又は開発が完了した不動産は棚卸資産としてみなし、正味実現可能価額(販売見込額(売価)―アフター・コスト)から販売努力に対する合理的見積利益を控除したものを時価とする。
(2)開発後販売する不動産は開発後の正味実現可能価額から造成・開発原価等今後完成までに要する見込額と販売努力に対する合理的見積利益を控除した価額とする。
(3)販売可能見込額は、市場価格が存在する場合にはその市場価格とし、存在しない場合は不動産鑑定士の鑑定評価額、一般に公表されている地価又は取引事例価格、及び収益還元価額等の合理的に算定された価額を適用し算定する。
○前払費用 (1)原則として全額減算する。
(2)但し、当該契約解除により現金回収が見込まれるものは回収可能見込額をもって時価とする。
(3)建設業等における「未成工事支出金」は、棚卸資産、前途金、前払費用の複合的性質を有するため、これらの評価方法を複合的に考え時価を算定する。
○貸付金
  ・短期貸付金
  ・関係会社短期貸付金
  ・長期貸付金
  ・関係会社長期貸付金
(1)原則として、貸付先の決算書入手等により財務内容を把握し、回収可能性に応じて各債権金額から貸倒見積額を控除した額を時価とする。
(2)金融業等で全貸付先の決算書等入手が困難な場合は、関係会社等貸付金を除いて、一般の売上債権に準じて評価する。
(3)回収可能性が不明確な役員等への貸付金は、原則として全額減算する。
(4)福利厚生のための住宅取得資金等の従業員宛貸付金は、原則として減算不要とする。
○未収入金等
  ・仮払金
  ・その他流動資産
  等
(1)原則として「売上債権」に準じて評価する。
(2)仮払金のうち、本来費用処理されるべきものは減算する。
(3)経営者等への仮払金は回収の可能性を判断し回収不能見込額を減算する。
○事業用不動産
(含投資不動産、遊休不動産)
  ・土地
  ・建物
○事業継続を前提に、不動産鑑定士による鑑定評価額、簡易鑑定評価額等を時価とする。
○その他償却資産 ○市場価格があるものは当該市場価格、市場価格が存在しないものは、再調達価額を求めた上で、当該資産の取得時から評価時点までの物理的、機能的、経済的減価を適切に修正した価格、または当該資産から獲得されるキャッシュフローに基づいた収益還元価格。
○リース資産 (1)ファイナンス・リース取引に該当する場合は、未払リース料相当額は負債として計上し、見合として担保権対象としてのリース資産を資産計上させる。
(2)リース資産の時価は「その他償却資産」に準じて評価する。
○無形固定資産 (1)観察可能な市場が存在する場合には市場価格を時価とする。
(2)市場価格がない場合は、専門家による鑑定評価額や取引事例に基づき合理的に算定された価額とする。
(3)類似した資産がなく合理的な評価額を見積もることが出来ない場合には全額減算とする。
○有価証券
(投資有価証券含む)
(1)市場価格がある有価証券は、当該市場価格に基づく価額により評価する。
(2)市場価格がない株式(出資金)は「関係会社株式」に準じて評価する。
(3)市場価格がない社債等の債券は「貸付金」に準じて評価する。
○関係会社株式 (1)市場価格がある有価証券は、当該市場価格に基づく価額により評価する。
(2)市場価格がない場合は財産評価基本通達、「株式等鑑定評価マニュアル」(日本公認会計士協会経営研究調査会)やその他の合理的評価基準に従い算定された価額を時価とする。
(・純資産方式・収益方式・配当方式・比準方式・併用方式等)
(3)業況不振先や財務内容が不明な先の株式は原則全額減算する。
○その他の投資 (1)敷金:契約により返還時に当然に控除される額がある場合はその額を除いた金額。また、原状回復費用の見積を控除した価額とする。賃借不動産に担保権が付される場合には、賃借権が担保権に対抗できるか等の問題を考慮し、回収不能額を見積り減算する。

(2)建設協力金:「金融商品会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号)においての時価「返済期日までのキャッシュフローを割り引いた現在価値」等により評価する。

(3)差入保証金:貸主の財産状態を勘案し差入保証金の債権金額から貸倒見積額を控除した価額とする。また、営業取引に係る保証金は、「貸付金」に準じて評価した額を適用する。

(4)ゴルフ会員権等
・会員権相場のあるゴルフ会員権は相場をもって時価とする。
・会員権相場のないゴルフ会員権は、入会金部分については全額減算し、預託保証金は額面金額から貸倒見積額控除後の価額とする。

(5)保険積立金:評価時点において解約したと想定した場合の解約返戻金相当額とする。
○繰延資産 ○原則として全額減算する。
○繰延税金資産・繰延税金負債 税務上の資産の評価損益の計上、再生計画の内容等に基づき、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(日本公認会計士協会 監査委員会報告第66号)等に照らして計上額の見直しを行う。
○裏書譲渡手形・割引手形 ○割引手形買戻債務を認識し負債計上し、見返り勘定として実際に回収が見込める金額を手形遡及権として資産計上する。
○貸倒引当金 (1)個別引当の設定対象となった債権について、当基準に基づき評価損の計上が行われているときは、当該債権についての貸倒引当額を取り崩す。
(2)一般引当について、当基準に基づき引当率算定の見直しが行われ評価損が計上されたときは、一般引当の貸倒引当額を取り崩す。
○退職給付引当金 (1)「退職給付に係る会計基準」に従って設定するが、積立不足額について一時に認識し計上する。
(2)中小企業等で合理的に数理計算上の見積を行うことが困難である場合等では、「退職給付会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第13号)による簡便な方法を用いることも可能とする。
○その他の引当金 引当金の設定対象となる資産・負債について当基準に基づき評価の見直しが行われているときは、関連する引当金については取り崩す。
○デリバティブ取引 (1)取引所に上場している取引は最終価格を時価とする。
(2)取引所の相場のない非上場取引の時価は、市場価格に準ずるものとして以下のような合理的に算定された価額とする。
・取引システムでの気配値による方法
・割引現在価値による方法
・オプション価格モデルによる方法
(3)ただし、ヘッジ取引についてはヘッジ対象資産・負債 について当基準により評価が行われた場合には、ヘッジ手段であるデリバティブ取引について当基準により評価する。
○保証債務等 (1)保証債務については、債務者が債務不履行となる可能性があり、その結果、保証人が債務を履行しその履行に伴う求償権が回収不能となる可能性が高い場合、保証債務の総額から、主たる債務者の返済可能額及び担保により保全される額等の求償権の回収見積額を控除した額を負債に計上する。
(2)尚、決算以降に保証履行した、または保証履行を請求されている保証債務が有る場合には、当該金額と(1)で算定した必要額の何れか大きい金額を負債に計上する。
(3)他の債務者の債務の担保として提供している資産がある場合等で、当該資産について担保権が履行される恐れが高い場合についても、求償権相当額から回収見積額を控除した額を負債に計上する。