対外発表 The Resolution and Collection Corporation
ホームへ メニューへ

RCCの回収指針と回収のあり方について
〜社内の回収責任者会議での社長発言より抜粋〜

平成14年6月

 1990年を頂点としたバブル経済崩壊により、金融機関等の膨大な不良債権の処理は、日本経済の再生にとって、ここ数年来緊急かつ必須の課題となっています。
 このような背景の下に、整理回収機構(RCC)は、いわゆる住専法や預金保険法等の金融関係法令に基いて、主として旧住専7社及び破綻金融機関等から譲り受けた不良債権を含む資産等の整理・回収を適正に行う機関としての公的使命を負っています。さらに、2001年以降の一連の閣議決定・法改正等において、健全金融機関が抱える不良債権の処理促進のため、RCCの一層の機能拡充が求められ、「信託を含む多様な手法を用いて健全金融機関からの不良資産買取・処理の促進を図る」、「厳正な回収に努める一方、再建すべきと認められる債務者については、法的・私的再建手続き等を活用し、その再生を図る」等の使命をも担うことになりました。
 RCCはこれらの使命を遂行するうえで、回収指針として「契約の拘束性の追求」、「人間の尊厳の確保」、「企業再生の追求」の三つを打ち樹て、これらの交点を見極めつつ、回収の質・量・時間・コストの4つの次元において「最強にして最良のサービサー」を目指すことにより、最大の課題である不良債権の迅速処理と国民負担の最小化に向けて全力を挙げて取組んでいます。

回収指針について
 ―― 普遍的公理としての回収の指針 ――
 ここに「契約の拘束性」というのは、ローマ法以来の社会の普遍的公理であって、契約社会において不可欠の法理的基盤をなしているものです。したがって、RCCの債権回収活動は、「契約の拘束性」を追求し、経済社会におけるモラルハザード防止のための活動であるともいえるのです。
 しかしながら、人間社会は「契約の拘束性」を追求するだけで、なんらの矛盾も問題も生じないような単純なものではありません。なぜならば、人間社会においては、「人間の尊厳」という絶対的価値が存在しており、あくまで「契約の拘束性」を追求していくとき、この絶対的価値と衝突する場面が起こりうるからです。シェイクスピアの名作「ヴェニスの商人」のストーリーは夙にこのことを示しているといえるでしょう。RCCの債権回収において「契約の拘束性」の追求に急なあまり、いやしくも、「人間の尊厳」を損なうことがあってはならないのです。

 ―― 政府の方針を踏まえた回収指針の深化 ――
 RCCの機能拡充を巡る一連の政府方針で「企業再生」が打ち出されたのは、企業の経済社会に占める位置の重要性、あるいは企業自体の価値を十分認識した上でのことであろうと考えます。この政府方針に示されたのと同じ認識に立って、「人間の尊厳の確保」を企業に適用し「企業再生の追求」をRCCの回収指針に加えることは、RCCの回収指針の深化というべきでありましょう。
 もちろん、RCCの取組む案件の中では再生型ではなく、清算型の回収ということにならざるを得ないケースが多いかもしれません。しかしながら、案件を見ればまず当該債務者企業の再生の可能性を考える、それがまさに我々のとるべき再生マインドというものではあるまいかと考えます。

 ―― 三指針の交点で回収するために ――
 これら三つの指針のぎりぎりの交点を見定めるために当社の役職員はどのような努力をすべきでしょうか。債権回収と企業再生に関わる法律、経済、金融、産業の深い知識と豊富な情報・経験を身につけることはもとより人間と人間社会への洞察力と豊かな人間性が求められるのであって、われわれは、これらの力と資質を養うべく、不断の努力を惜しんではなりません。われわれの債権回収等の業務に必要とされる高度な知識と技術も、この洞察力と人間性を前提に練磨し発揮されねばならない、と考えます。


最強・最良のサービサーを目指して
 不良債権等の処理が日本経済再生のための緊急かつ必須の課題であることから、我がRCCは「最強にして最良のサービサー」でなければならないと思います。最強、最良のサービサーとはどんなサービサーをいうのでしょうか。回収の質(債務者のできる限りの納得を得た回収 −これには企業再生も含みます)・量(回収の極大化)・時間(迅速性)・コスト(効率性)の4つの次元において最大・最良の効果を納めることが求められるところであり、恐らくその実現をもって「最強にして最良のサービサー」といえるのではないかと考えます。


コンプライアンス態勢の強化
 RCCの相対する債務者ないしその関係者の多くは、債務の弁済等に関しては善良かつ誠実な企業人や市民です。しかし、債務者もしくはその関係者の一部に見受けられる暴力団構成員ないしはその周辺に位置する者が、あらゆる手段を用いて当社の債権回収業務を攻撃し、あるいは妨害する行動に出るケースも数多く存在します。また、暴力団関係者のような反社会的性向のある債務者でなくとも、その責任財産に関する情報ばかりか責任財産そのものの隠匿に走るなど、不誠実な債務者も少なからず見受けられるところです。
 これらの反社会的又は不誠実な債務者に対しては、必要やむをえない限度において預金保険機構の特別調査権や捜査機関の捜査権の発動を求めるなど、強力かつ迅速に対応しなければ債権回収の実を挙げ得ないのです。
 また、たとえ相手が反社会的性向の債務者であれ、RCC自身はあくまでも「クリーン」に対応しなければなりません。暴力団関係者等のいわゆる闇の勢力とは絶対に手を結ばないことは言うまでもないところですが、不断に当社全体のコンプライアンス態勢を強化しつつ、適正手続きをもって公正に業務を遂行しなければならないのです。RCCの役職員はすべからく紳士であり淑女でなければならないのです。